食物アレルギーといえば小児のイメージですが、実は成人の食物アレルギーもけっこうみられます。
今回大人の食物アレルギーについてまとめてみました。
成人の食物アレルギーの原因
まずは原因となる食品ですが、下の表のように小児とはだいぶ異なります。
小児でよくみられる鶏卵や牛乳のアレルギーはほとんどなく、エビやカニといった甲殻類のアレルギーが多くみられます。エビにアレルギーがある人の3分の2はカニにもアレルギーがあります。
また小麦のアレルギーは運動後に起こる運動誘発性のアレルギーが多いです。小麦を食べるだけは症状は出なくて、小麦製品を食べた後に運動することでアレルギー症状が発症します。
十数年前には化粧品が原因となった小麦アレルギーが社会的なニュースになりました。茶のしずく石鹸という製品に含まれる小麦の成分が原因で、小麦アレルギーの発症が多数確認されました。
魚のアレルギーは魚そのものだけでなく、魚に寄生するアニサキスに対するアレルギーも多いと考えられています。アニサキスに対するアレルギーの場合、食べてからかなり時間がたって症状が出ることもあります。魚を加熱や冷凍するとアニサキスは死にますが、アレルギーは回避できないと考えられています。
果物はキウイが最も多く、次いでリンゴやモモ、メロン、バナナが知られています。シラカバやブタクサの花粉との交差反応(同時にアレルギーを起こすこと)もみられます。
大豆アレルギーは、最近の健康志向を背景に豆乳でアレルギーを起こす人が増えているようです。加工すればアレルギーは起こしにくくなり、豆腐や味噌は問題ないことも多いです。
納豆アレルギーも存在することが知られています。これは大豆アレルギーとは関係なく、クラゲに刺されることで納豆特有の成分にアレルギーが引き起こされることが分かっています。
さらに最近の健康志向で増えているとされるのがクルミのアレルギーです。ピーナッツアレルギーが有名ですが、クルミの他にもカシューナッツやアーモンド、ヘーゼルナッツ、ピスタチオなどのアレルギーがあります。
成人の食物アレルギーの診断
診断には丁寧な問診を行って、食事内容や経過の詳細を確認することがまず大切です。
診断に役立つ検査には以下の3つがあります。
●特異的IgE検査
手軽に行える検査として、血液検査でIgEというタイプの抗体を調べる方法があります。
採血をして検査会社に提出するだけで結果が出るため、アレルギーに詳しくないクリニックでも検査することができます。
ただし注意が必要なのが、検査が陽性でも症状の原因となってるとは限らないことや陰性でも可能性は否定できないことです。
また同じ小麦や大豆のアレルギーでも検査の項目が複数あるため、検査の特性を理解しておくことが必要です。
●プリックテスト
プリックテストは下の写真のようにアレルギーの原因として疑われる物質を溶かした液を皮膚に注入する検査です。
15分後の皮膚のアレルギー反応を判定します(陽性の場合は赤く腫れます)。
溶液の試薬が必要なので、行っている医療機関は限られます。
●経口負荷試験
負荷試験はアレルギーの原因として疑わしい食品を医療機関で食べてもらって症状が出るかどうかを確認する検査です。
ときに重症のアナフィラキシーを起こすこともあるため、慎重に行う必要があります。
最も確定診断につながる検査ですが、リスクや煩雑さのため行っている医療機関はほとんどありません。
対策と治療
アレルギーの原因となる食品を避けることが基本になりますが、神経質になりすぎるのもよくありません。
大豆アレルギーがあっても豆腐や味噌に加工してあれば問題ないことも多いです。
ひとつのナッツにアレルギーがあってもすべてのナッツを避ける必要はなく、交差反応があるものに注意することが大切です。
あまり制限しすぎずに食べられる範囲を模索していく必要があります。
一方で食物アレルギーは重症になるとアナフィラキシーを起こすため、命にかかわるケースもあります。
そのためアレルギーの程度が強い人は、エピペンを持っておくことが勧められます(強いアレルギーが出たときに、太ももの筋肉に注射します)。
まとめ
大人の食物アレルギーについて紹介しました。
食物アレルギーは小児だけの病気ではなく、大人になってから発症することもよくあります。
原因がよく分からないじんましんの原因になっている可能性もあります。
医師が考えるだけでは診断や対策はできないので、本人や家族がしっかり勉強する必要があります。
さらに勉強したい方はこの本がおすすめです。
総合内科専門医:荒井 隆志
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