最近コロナ禍の影響で、ピロリ菌の除菌治療が減っているという報告が順天堂大学から発表されています。
ピロリ菌の除菌のためには、医療機関を受診し内視鏡検査を受けることが必要で、コロナ禍で敬遠する人が増えているのが理由と考えられます。
今回ピロリ菌について解説します。
ピロリ菌が引き起こす問題
ピロリ菌は複数の病気と関連があり、胃潰瘍や胃リンパ腫、血小板減少症などの原因になります。
しかし何をおいても大きな問題が胃がんの発生です。
胃がんは日本人のがん罹患数の第2位で、死亡者数は第3位です。
そして日本人の胃癌の99%はピロリ菌が原因です(ピロリ菌が関係しない胃癌はとてもまれです)。
高塩分食や喫煙、飲酒も胃癌のリスクを上げますが、何といってもピロリ菌が最大のリスク要因です(食品は塩蔵魚卵や塩辛、漬物などがリスクになりますが、最近あまり食べなくなっていますね)。
ピロリ菌の検査
医療機関では内視鏡検査を行って萎縮性胃炎というタイプの胃炎がみられた場合に、ピロリ菌の検査を行っています(ぼくは以前に内視鏡検査を受けて萎縮性胃炎の変化がないことを確認済みです)。
ピロリ菌の検査には、①血液検査、②便検査、③呼気検査、④内視鏡で組織を調べる検査、などがあります。
最近では検診でピロリ菌の抗体検査を行っている自治体が増えています。検診で抗体検査が陽性の場合に、医療機関を受診して内視鏡検査を行います。そして内視鏡検査で萎縮性胃炎が確認されたら除菌治療を行うことになります。
ピロリ菌の除菌治療
ピロリ菌の除菌治療はそれほど大変なことはなく、3種類の内服薬を朝夕の2回、1週間服用するだけです(たまにおなかがゆるくなったり、薬疹が出ることもあります)。
最近のはタケキャブという薬を組み合わせることで、除菌の成功率が上がり9割弱の率で除菌成功します。
除菌が成功したかどうかは、内服治療後に2か月の間をおいて呼気検査を行います。
一度除菌に成功すれば基本的にピロリ菌が再発することはありませんが、胃がんが発生するリスクは大幅に減るとはいえゼロにはならないので、その後も定期的な内視鏡検査が勧められます。
おわりに
胃がんは以前より減ったとはいえ、今でも日本人のがん罹患数の第2位です(死亡者数は第3位)。
是非検診を受けるようにしましょう。
総合内科専門医:荒井 隆志
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